【王道ばっか】5月に見た、おすすめしたい映画
執筆者:𝙆𝙐.𝙅𝙄.𝙍𝘼 (@p001_POOL) | Twitter
こんにちは、くじらです。
アイキャッチは『エルム街の悪夢』の主人公、ナンシーの絵を描いたやつです。すごいやつだよこいつは。
個人的な話ですが、5月を「映画強化月間」に定め、60本映画を見ました。私の中では結構見てます。
その中で「これは見てほしい〜😭みんな〜😭」と言いたい映画を6本!お伝えします。ただ、「言われなくても見てますが…笑」と言われそうな作品ばっかりなので、笑ってみてください。
『ウィッカーマン』:5月を語るなら避けては通れなかった大傑作
これを伝えたくてまとめたようなもんだ。某アスターの『某ミッドサマー』がこの作品に似ているということで注目されていたが、もう全然違う。ごめんなさい、苦手だったんです。
キリスト教の欺瞞をクスクス笑いで剥いでいくカルト宗教のプロジェクト完遂を見守る映画。最後には号泣してしまった。
舞台・サマーアイル島に根付くカルト宗教は、人々を支えるために要請されたシステムだったところが肝。だんだんと「これは宗教のあるべき姿」だ、と力強くなっていく。
祭り描写も最高。みんなちょっとワクワクしながら、でも生活の延長線上にあった。とてもリアル。そのリアリティが暖かく、領主や先生の理知的な愛と威厳で成り立っていた。
とにかく領主の王たる様子が見事すぎた。子どもの前で大人を好き勝手に叱りつける厳格なクリスチャンである主人公・ハウイーに対し、島民の前で「必ず来年は実を結ぶ」と宣言してみせる領主。そして不測の事態たる凶作時でも決して取り乱さずに生贄に敬意を示す領主。
これはただのカルトムービーではない。人が生きていくことへの大賛歌だった。
『ノロイ』:00年代の日本のバラエティにまっすぐ愛を伝える快作
日本が誇るホラー監督、白石晃士監督によるドキュメンタリー風ホラー映画。かなり怖いと思う。
この映画がすごいのは、日本のバラエティを馬鹿にせずにまっすぐ愛を伝えているところだとおもう。
軽薄なテレビ文化と謎の伝承が否定されずにかけあわさって、最終どうしようもない流れがとにかく最高。善悪を過度に主張しない人物構成も見事。一度でも日本のバラエティに「くだらない」と思いながら笑いを投げかけたことのあるひとには絶対にオススメできる。
ラストはもはやドキュメンタリー風映画の禁忌を犯すようなファンタジックな出来になっており、かなりゾッとします。B級ホラーが好きな人、和ホラーのどんよりが好きな人、どちらにもおすすめ。
『遊星からの物体X』:雪原に息づく、冷酷なパニックを見よ
押しも押されぬ名作パニックホラームービー。ジョン・カーペンター監督の堂々の大名作。特に何を言うこともない。全ての絵がカッコいい。
ずっと完璧な室内ショットによって緊張の糸が貼られ続け続け続け、まさに今というタイミングで全部が放出する。リアリティありまくる物体たちの凄みと人間関係の緊張に溢れた2時間弱。
カーペンターは天才だ!と思って他の作品とガガガと見たが、この緊張感は他にはマジでなくて、映画の神が舞い降りたんだろうなとしか思えない(とはいえ他のカーペンター作品も最高ですよ。『ゼイリブ - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画』も見てくれ。)
まだ未視聴で、人狼みたいな空気感にゾクゾクする方、天才映画を見たい方、まずはいっぱいこの映画の空気感を味わってほしいです…。
『マチェーテ』:心躍らせろ!拳をあげろ!マチェーテを掲げろ!
ロバート・ロドリゲスという大天才ユーモラス監督と出会った5月。ロドリゲス作品の中でもこの『マチェーテ』は全部が詰まっていると思う。
主人公はマチェーテ。武器は短刀「マチェーテ」。演じたダニー・トレホの、一度見たら絶対に忘れられない天賦のビジュアルが画面の端から端まで花開く。
先ほど主人公の武器はマチェーテ、と言ったが、ならず者道まっしぐらのマチェーテは好みの武器をいつでも使えるわけではない。マチェーテは「マチェーテ」を使うからマチェーテなのではない。マチェーテ自身が本質的に近距離武器で、彼が使うあらゆるアイテムが「マチェーテ」になる。そんな装備品への優しい包容力が、アクション映画に最上の価値を与えている。
金のかけ方が下手なのか???と勘繰ってしまうほどの豪華脇役陣に支えられながら、夢物語が現実になった快作です。B級アクションを見たいなら、ここに全てがあります。
『スクリーム』:エンタメホラーはここに結実した。ガールズパワーとホラー映画史への深すぎる愛。
ウェス・クレイヴン作品、『エルム街の悪夢』と『スクリーム』どちらを取り上げようかと思って、より完成度が高いと感じたこちらを取り上げました。
終わった後「最高!あなたは最高!」とハグしたくなる痛快ガールズパワーホラー映画No.1。
ウェス・クレイヴンの若者たちは、その時代の寵児たる自らを存分に謳歌していて大好き。この時代であること、若者であることに必然性しかない。
数ある名作ホラーへの目配せがいやらしくなく、パロディをエンタメ味にして絶頂まで盛り上げる手腕は見事。
ウェスは多分めちゃくちゃ徳のある人物。人のかわいさや頑張りを心から信じてる。
誰かと痛快にホラーを見てポップコーンを楽しみたい方、ヒロインが叫んで逃げるホラーに疲れた方に見てほしい。3までは見たけど、ずっと面白いよ。
『絞殺魔』:映し方に全てを託したサスペンス映画の鬼作。迫る真実に目が離せない。
いやこれ見づらい(多分DVDじゃないと見れない)けど、本当に見て欲しい。
この映画はサスペンスでありながら、「真実を見つけ出す」ことではなくて「真実と向き合う」ことに重きを置いている。
だからか、犯人探しシークエンスはかなりコミカルで笑える。変態博覧会はギャグ。怖いのは『絞殺魔』の頭の中に入り込んでゆく後半。
誰が悪いだの説教要素だのがないぶん、絞殺魔と共に苦しむしかない。あるギミックによって、物語全体が絞殺魔の真実に迫ることを拒否しているからつらい。
後半、絞殺魔の記憶を辿る対話のシーンはかなりアニメで驚く。しかし、苦しい展開の中「アニメ的演出」を楽しむ視聴者を置き去りにするラストの告白シーンは、今まで見続けた蓄積あっての壮絶な結末。
最後は、刮目せざるを得ないワンカットに息を呑み、とんでもないものを見せられたという思いにさせられる。
ト書きだけまとめたらそんなに特殊なシナリオではないのに、ここまで恐ろしく仕上がっている今作に映画の可能性を強く強く教えてもらった。
こんな感じでした〜!他にも『悪魔のいけにえ(ラストカット美しすぎる)』『ポルターガイスト(子どもだましの真骨頂ホラー)』『ロッキー(泣くよそりゃあ)』などなど、めちゃくちゃ良い作品にたくさん出会えました。
6月からはもう少しのんびり、でも映画の時間を確保しながら過ごしたいと思います。