p001_POOL

夏が来たりてギャルになる

「東京」イメージソングのアンケートを取った話。

執筆:https://mobile.twitter.com/p001_pool

「東京の街に出て来ました  あい変らず わけの解らない事 言ってます」

                f:id:kujirrr:20190917220848j:image

こんにちは。くじら/ねぎ/パン/つくも/すさんです。

(今回いろんな人と関わらせてもらったので、あらゆるハンドルネームで失礼いたします。)

冒頭の歌詞は、くるりの「東京」という曲の歌い出しです。上京した男の子の心情を訥々と歌い上げる名曲として、今も愛される曲です。

私は思春期の頃から東京で暮らし、中野区にある高校で過ごしながらこの曲を聴いていました。東京で育った人にとってのくるり「東京」、そして上京して来た人にとってのくるり「東京」、きっと全く違う曲だろうとその頃から考えておりました。今回はその気持ちを「アンケート」を取るという形で消化させていただきました。総勢60名を超える皆様にご協力いただいたこと、誠に嬉しく思います。このブログには、アンケートをまとめたスプレッドシートと、apple musicプレイリスト(サブスク解禁されている曲に限り)を添付しています。皆様の個人的東京を集め、どんな都市が出来上がったかを楽しんでいただければと思います。めちゃなげえです。

目次

 

1 アンケート内容 ー 集計の仕方 (東京をかき集める)

https://twitter.com/out_of__/status/1166204448827330560?s=21

まずはこのような内容をTwitter・LINE問わず知人に送りまくりました。冒頭のたくさんのハンドルネームの併記はそのせいですね。どんな東京観を持って答えてくださったのか、私の身勝手なソートとともに見ていこうと思います。結果の表はブログの最後につけさせていただきます。

 

2 東京ー 女王は強かった(ネオンは輝いているか)

1番多かった回答は、ロマンたっぷり外連味たっぷりの、椎名林檎/東京事変だった(大変暴力的な括りで申し訳ない)。個人的な思い出とともに語られる回答は少なく、まさに「東京=イメージ」として受け取られているものが多かった。彼女らはすでに東京を東京の上に作り上げ、ネオ-東京はみんなの心にメガロポリスを形成していた。歌舞伎町の女王は強かった。

丸の内サディスティック/椎名林檎

「東京は愛せど何もない」という歌詞が印象的。
都内の駅名が多く歌詞に登場するため、
中学生の時に「こんな駅が東京にあるんあだな」と
東京に思いを馳せた記憶がある。

ー1995年、高知生まれ

東京と出会う前にこのネオ-東京に出会った人もいる。

丸の内サディスティック・歌舞伎町の女王/椎名林檎

関西の田舎生まれ田舎育ちで東京のことはあんまりイメージ
できなかったけれど、これらの曲による先入観で、
”快楽”と”堕落”の二面性が顕著だと思っていた。
一見楽しそうだけどなんだかみんな疲れている。
実際近場住んでみたらやっぱりそんな感じだった。
ー1993年、和歌山生まれ

イメージと実際の姿はどこかで必ず繋がる。鏡に映る像に触れてみたくもある。

 

3 東京 ー 私たちの街

東京という響きに、そのまま故郷の香りを思い出す人も少なくない。時にそれは下町の、時にそれは煌びやかな夜の風景を想起させている。どちらも「東京=ムード」を感じさせる。

二人のアカボシ/キンモクセイ

東京の夜に雰囲気が似合う気がするから。
中学時代、親友と2人でこの曲にドハマリして、夜の浅草とか上野
を自転車で走りながらこの歌を口ずさんだものです。

ー1985年、東京生まれ

プラスティック・ラブ/竹内まりや

恋愛関係の歌なんですけど、夜の東京がめちゃくちゃ想像できて
”夜更けの高速で 眠りにつく頃 ハロゲンライトだけ
妖しく輝く”ってところがあるんですけど、まさに東京!夜景!
というのが頭に浮かぶんです。東京の夜景、クラブ、ディスコ、
みたいな なんとなく私の歳が遊ぶ東京みたいなのが
描かれている感じです。

ー1996年、東京生まれ

どちらも東京そのものを表す1つのムードだと言えるだろう。そのどちらをも纏って、東京は東京タワーや六本木ヒルズを飲み込んで暮らしている。

 

4 東京 ー そうであれと願われた街

林檎嬢が作り上げた不夜城とは違う東京も、人々の心の中に存在していた。それはある種の意志が歌に乗りかかる形で、突き動かされる「東京=パワー」として語られていた。

少女3号/大森靖子

"「あなたがいればここは東京」というフレーズ。地方出身の東京という街への理由ない憧れを、東京の風景を描かずに見事に表現していると同時に「あなた」への恋心の強さも表現している
ことの素晴らしさ。自分も東京という街は特別な気がしていた、特別でないといけない気がしていた。そんな自分にとって、街の風景や東京のあるあるより、「特別な人に出会えた街だからここは東京だ」というシンプルなワンフレーズが、共感とともに刺さった。"

ー1991年、北海道生まれ

この東京は「特別な街である」ことの重要性が意味深く刺さるコメントを頂いた。この「人と出会える街」、「東京=交差点」はきのこ帝国の東京にもシンプルに描写されている。

東京/きのこ帝国

東京で知り合った好きな人たちが好きだったから

ー1995年、静岡生まれ

日々あなたの帰りを待つ  ただそれだけでいいと思えた
赤から青に変わる頃に  あなたに出逢えた
この街の名は、東京         (東京/きのこ帝国 より一部抜粋)

そうあってくれと願われる街は、まだ出来上がらないパズルのようだと感じた。

回送/長澤知之

私が思う東京そのままだからです。

住んだことないし全然違うとおもうけど、そうであってくれという願いも込めて。

ー1992年、大阪生まれ

この頃いつも同じ空を繰り返し顧みてるのさ
それは東にも西にも南にも北にも無い ただ 遠い空
まだ 何一つ見えちゃいないのに さもありなんと鼓動してるんだ
それは時計の針のように 確かに ほら 確かに    (回送/長澤知之 より一部抜粋)

 

5 東京 ー そこに確かに住んだ街

SEASON/Fishmans

地元で東京と孤独と自由に憧れながら毒親と暮らしていた頃も
東京の街の隅で風邪薬でやられちまった気分でいた頃も、
みんなのバックミラーから落っこちてゆくように東京にひとり
置いて行かれるような気持だった頃も、よく聞いて元気
もらってたから、かなぁ(思い出がありすぎるw)

ー1992年生まれ、福島生まれ

夕暮れ時を二人で走ってゆく 風を呼んで君を呼んで

東京の街のスミからスミまで 僕ら半分夢の中      (SEASON/Fishmansより一部抜粋)

この回答は自身に歌詞を乗せながら、東京を歌とともに体に流し込んでおられるような印象を受けた。

東京に確かに住んでいる。東京に触れた思いは、なにかしらのギャップとして機能する。

正しい街/椎名林檎

一度も歌詞に「東京」は出てこないんだけど、なんか「東京に出た人間と故郷の関係性ってコレなんだよな〜〜っっ!」ってなります。具体的なエピソードは特にないんだけど、上京一年目の冬にめちゃくちゃ繰り返し聴いてました。椎名林檎は天才。

ー1994年、宮城生まれ

忠告は全て いま罰として現実になった
あの日飛び出した 此の街と君が正しかったのにね (正しい街/椎名林檎 より一部抜粋)

「東京=線/区切り」、という役割も確かにありそうだ。向こう岸に渡った時に、自分が踏む地面がどう見えるのか。

 

5 東京 ー 物語の向こうの街

東京/銀杏BOYZ

なんとなく。この曲を好んで聴いていた頃はまだ東京に住んでいなかったので、思い浮かぶのはむしろ高校からの帰り道の景色とか、そういった類のもの。

1994年、千葉生まれ

弦楽四重奏曲第9番ホ長調「東京」/毛皮のマリーズ

田舎者にとっての東京のイメージは暗くて冷たくて汚い物だったのですが、とても温かく表現されていて、大変に大好きな曲です。+あなた様(私)がLINEをくれたのが確か志磨さん繋がりだったと記憶しており、その事からパッと思い付いた部分もあると思います

※私も毛皮のマリーズが大好きで、回答主と初めて話した内容が毛皮のマリーズについてでした

1991年、愛知生まれ

「東京≠東京」  結びつく先が地元の風景かも知れない。

「東京≠中心」  知らない世界のおとぎ話かも知れない。

 

東京NIGHTS/宇多田ヒカル

自由と利益と文化の象徴であるはずの東京の中でなぜか閉塞感と漠然とした焦燥感にかられることに、欲望と渇望、そして確固たる自己の存在に気づかされる曲。自分はなぜここにいるのか、なぜ全てをわすれたいのか。表面的な象徴で取り繕われてしまう自分の心情のふがいなさに憎しみとも悲しみとも取れる言葉を向けるも、それを大きく包み込む愛(自己愛なのか、母性愛なのか、いずれにせよ自らの根本を定義づけさせてくれる慈愛)がどうやっても認められる不思議な曲。環境、自己、現実、全てに否定的になる時、この曲は愛に気づかせてくれる。肯定ではない形で、自分を認める豊かな力。 この曲の中では、東京は“自分を否定しうる、究極絶対とされてしまうような論理“として扱われているように感じる。

ー1994年、神奈川生まれ

渦巻く概念と大いなる力が両立する、東京=英華/立ち位置/絶対者、という側面。

「東京=装置」として物語られることもやはり存在する。

 

6 東京 ー 迎える[向かう]くるりの「東京」

もともと興味があった、くるりの「東京」はどう受け取られているのか、という問いには、なんとも予想外の答えが用意されていた。

「東京」のタイトルもあってまず最初にどうしても思いつく。くるりが好き。「恥ずかしいことないように見えますか」っって歌詞が上京したてで東京に馴染めてるのか戸惑ってる感出てて秀逸。

ー1983年、東京生まれ

自分は地方出身じゃないけど、上京した人の心情が歌われていて印象に残っている

ー1994年、東京生まれ

自身の思い出をくるりの「東京」に寄せて語った、東京以外出身者が1人もいなかった。かわりに、東京生まれの人からこんな話も同時にもらった。

オレンジトレイン/andymori

東京の西の方で生まれ育ったので、中央線が東京のイメージ。疲れたかんじがよい。吉祥寺じゃなく阿佐ヶ谷荻窪の感じ。ポパイ的?トーキョーのリキみのある曲は、違うと思う。東京じゃない方が東京な気がする。東京駅のお土産にろくな名物がなくていいのと同じように。

あと上京してない東京生まれにくるりの「東京」みたいなのはわかれないと思ってる。

しかし結局君に聞かれたので大学の頃よく聞いた曲を思い出した気がする。

ー1993年、東京生まれ

ユリイカ/サカナクション

耳にして不思議な譜割りだとおもったのと、地方出身の知人が「東京が身近にある人にはわかるまい」と言って色々考えさせられたから。

ー1989年、神奈川生まれ

向かう東京は、迎える東京のために用意されていたのかもしれない。東京に向かう、という意志を帯びた回答は、個人的な思い出の色がつよいものが多かった。

Change/ONE OK ROCK

東京来た時に自分を奮い立たせるために聴いてた。挑戦しかない自分のための歌。

ー平成元年、北海道生まれ

 

少し脱線するが、上記のオレンジトレインの回答の中で、ポパイ的トーキョー観の否定があった。いわゆる渋谷系音楽にもどこか抜けたようなイメージがあるが、東京の気張らなさは大きな側面かも知れない。逆に言えば、気張ったトーキョーはどこか面白みに欠ける。サブカルチャーの盛んな中央線は、そんな曲によく登場する。

 

7 総評 ー 私たちのパッチワーク・トーキョー

「東京=イメージ」 実在する街とは違うレイヤーに存在した街

「東京=ムード」 気張らない自然な形で受け入れられた街

「東京=パワー」 願われ、願う人のために存在した街

「東京=交差点」 すれ違った人との目線のやりとりの中に存在した街

「東京=線/区切り」 まさにそこ と そこではないところ を意識する街

「東京≠東京」 空想を広げた土地に根付いている街

「東京≠中心」 読みかけた本のページの端に染み付いた街

「東京=装置」 舞台として用意された、力と愛をもたらす街

「迎える-東京-向かう」 迎える人のために用意された、ノスタルジーを呼ぶ街

 

東京で暮らす中で、色んな人と出会いました。その人たちと出会った東京は、ここまで違うのでした。東京で出会った人たちと出会った場所は、同じ東京ではなかった。どんな言葉、どんな道端でも同様のことは起こると思います。私たちは同じ東京で出会うことはできないけれど、だからこそ、相手の東京についてゆっくり考えることのできた時間は美しく愛らしいものでした。ちなみに、わたしの東京だけ秘密にするのもズルっこいなあと思ったので、以下に書かせて頂きます。

 

帝都モダン/相対性理論

1番サビでトーキョーシティーの表面的な描写をしたあと、2番サビで韻を踏みながら「妄想して」と誘う歌詞が、物語られる東京とそれに手招かれる人々の対比を感じられてまさに東京!と感じた。

ー1995年、東京生まれ

「東京=物語」

語られてこそ存在する街。

 

8 参考文献 ー アンケートとプレイリスト置き場(随時更新予定)

スプレッドシート

→共有シートです。コメントは誰でも残せます。シート1は全体、シート2は東京育ち、シート3は上京組、となっております。パソコンかタブレットでご覧頂くか、スプレッドシートのアプリをダウンロード頂くと快適かと思います。

●トーキョーソングス

https://music.apple.com/jp/playlist/tokyo-songs/pl.u-WabZZGVSWY61b2

apple musicに登録されている方は、是非お聴きください。サブスク解禁されている楽曲に限り、プレイリストに入れております。

執筆者:https://mobile.twitter.com/p001_pool

Twitterで絵をあげたり喋ったりしています。遊びに来てね。